2014年11月21日金曜日

舌のおもむくまま 22 「食と物語」

「日常を離れて新たな体験や知識を得るのが旅だと思いがちだが、それは旅の喜びの半分でしかない。残りの半分は、外からやってくる新しい出来事に、すでに体内にあったものが呼応し感応する、つまりは個人的な感動。
小説の舞台だけでなく、それぞれの思い出の場所、宗教上の聖所、人間の英知や労苦や栄光が集積した場所など、いずれも訪問する側がどんな「物語」を身内に持っているかで、景色も空も足元の一花も、意味の質や深さが違ってくるのが旅なのである。
(旅と物語:高樹のぶ子 JR広報誌「プリーズ」から一部抜粋)」と、この著者がバイブルとしているサマセット・モーム「雨」の舞台であるポリネシアのサモアの旅においてモームと同じ「雨」を体験し感動を覚えた話が書かれていました。

さてはて、ここで「旅」という言葉を「食」という言葉に置き換えると真に滋味深いものが身内に溢れてきます。
(コラ~! いくら素敵だからって文筆家の文章引用するな!って自分ツッコミいれといて(笑))

今回は、「ふきの煮物」を作りました。
【材料:トライアルで買った198円のふき】
 
手順は、鍋の直径の長さ(これが重要)にふきをカットし、塩をまぶして板ずりします。軽く水で洗い流し、先ほどの鍋でお湯を沸かし塩を入れて長めに切ったふきのあく抜きを5分弱ほどしました。

あく抜きしたふきを流水にさらし、ふきの小口の根本側から皮をぐるっと一回り剝いていきます。(この皮剝き作業が少しでも楽になるよう鍋の直径長さにします。短く切ったら手間が大変です。)

ふきを一口大に切って鍋に入れ、日本酒・みりん・少量の砂糖で調味し、まずは甘味を材料に染み込ませるため軽く煮込みます。最後にうすくち醤油を少量入れ煮立たせたあと、火を止め「含め煮」として味を馴染ませながら冷蔵庫で冷やし、夕食の副菜としていただきます。

嫌いなひとには申し訳ない(僕も昔苦手でした^^;)ですが、ふき独特の香りが口のなかで横溢し心も満たされます。今回は佃煮でもなく直鰹煮するのでもなく素材を楽しむ調理方法を用いました。そこには、ふきという素材に対して「すでに身内にあった物語が感応し」この歯ごたえと香味を楽しみたいという強い衝動に駆られその調理方法の選択をしたということだと思っています。

皆さんも何かを「食」してその意味の質や深さを感じることはありませんか。心の何かが感応しているかもしれません。

何かを感じること。それは心の健康を保つうえで僕にはとても大事なことのようです。

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